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私とは逆に、りっくんは雨が好きらしい。りっくんと同じようにお迎えを待っている他の子どもたちは教室の中で遊んでいるのに、一方のりっくんは外に出ていた。傘を差しながらしゃがみ込んで、じっと地面を見つめていた。
「りっくん」
呼び掛けると、「ちさ姉ちゃん、まいまいさんがいる」と言いながらりっくんが顔を上げた。
カラフルな三角形の模様が散らばっている傘と足元の長靴はお揃いの柄で、りっくんによく似合っていた。そもそも、ちゃんと長靴を履いているのが偉い。
私は小さい頃、長靴を履くのが嫌で嫌で仕方なかった。前日に買ってもらったばかりのピンク色の運動靴をどうしても履いていきたかったある日の朝、でも外は土砂降り。
「泥まみれになっちゃうから駄目」というお母さんの言葉を振り切って、私はそのおろしたての靴を履いていった。案の定、たった一日でどろどろに汚れてしまった。あまりにもショックでしばらく涙が止まらなかったけれど、自業自得だ。
「まいまいさん?」
りっくんの足元を覗き込む。なるほど、そこにいたのはかたつむりだった。スロー再生かと思うほどゆったりとした動作で、地面を這っている。
「僕、今日初めて知ったんだ。かたむつむりのことをまいまいって言うの。どうしてまいまいなの?」
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