りっくんは今日も

２．身長ってどうやったら大きくなるの？

「そうね、まいまいも同じ感じかな」

　同じと言い切ってしまうのは違うと思ったけれど、疑問が解消されてすっきりした表情をしているりっくんに水を差すようなことは言いたくなかった。

　…いや、これもまた違うかもしれない。本音を言えば、私は早く帰りたかった。家の中に入りたかった。

　雨が好きなりっくんの手前、言いにくいことではあるけれど、傘を差すというアクションが一つ増えるだけで、どうしても気持ちは晴れの日よりも下がってしまうのだ。

　とその時、背後の引き戸がするすると開く音がした。

　教室の中から出てきたのはあかね先生で、「こんにちは」「こんにちは、今日もありがとね千咲ちゃん」といつものように挨拶を交わす。つられてりっくんも立ち上がり、「あかね先生こっち来て、まいまいさんがいる」とまた嬉しそうに言った。

　かたつむりを前にしてテンションが上がっているりっくんは子どもらしくて可愛いけれど、これではまた足止めを食らってしまう。

　りっくん、帰ろうよ。私が履いてる靴、ローファーなんだ。極力、濡らしたくないんだ。ごめんね、わがまま言って。大人の事情ならぬ、高校生の事情というやつかな。