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なんていう心の中の葛藤が通じたのか、あかね先生は両手を顔の前に合わせて「ごめんりっくん、今ね、中で紙芝居読んでた途中だったの。先生、戻らなきゃ。まいまいさん、ここからでも見えるよ。よく見つけたねりっくん。小っちゃなこととか、気付きにくいこととか、いつもりっくんは誰よりも早く見つけるね。いろんなことを発見できるりっくん、先生すごいと思う」と言った。
りっくんの誘いははっきり断っているにも拘らず、その後のフォローが完璧なあかね先生。
結果としてりっくんが悲しい気持ちになることはなく、むしろ最後に残ったのは誇らしそうな笑顔だった。
「ほんとだ、みんな待ってるね。僕もちさ姉ちゃん待たせてるし、帰るねー」
あかね先生、頭が上がりません。こんなに大人な発言を、自然にりっくんにさせちゃうなんて。
私は静かに感動しながら、りっくんの手を引いて保育園を後にした。
私が手を取る前に、りっくんは当たり前のように自分の傘を閉じた。二人とも傘を差していると、いつもより距離ができてしまうせいで手が繋ぎにくいからだ。
私の傘の中にすっと入り込んできたりっくん、今日も相変わらず可愛い。
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