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雨から守ってくれる空間を半分こしながら、私たちはのんびり歩く。早く帰りたい、なんてさっきは思ってしまったけれど、いつだって歩調はりっくんに合わせる。
通りかかった少し古めの一軒家、その庭の片隅に、鮮やかな青の紫陽花が身を寄せ合うように咲いていて、思わず見惚れた。
雨の日が多くて憂鬱な六月だけど、唯一、紫陽花の花が見られるのは素敵だなと思う。いくつか色のパターンがある紫陽花の中でも、私は青が好きだ。青色に咲く花は、自然界の中では珍しいらしい。
そんな貴重な色を、ごく身近で見ることができるから、ちょっと嬉しくなってしまうのかもしれない。この雨に濡れて光る紫陽花の葉っぱの上を、それこそかたつむりが歩いていたりしたらとてつもなく絵になる。けれどりっくんのまいまいセンサーは、ここでは発動しなかった。
「ちさ姉ちゃん、あのね」
まいまいセンサーの代わりに押された、定例報告スイッチ。さて、今日の話題は何だろう。今日も新たな「何で?」「どうして?」が飛んでくるだろうか。
「僕、たんぽぽ組の中で一番小さくなっちゃった」
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