2.身長ってどうやったら大きくなるの?

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「可能性はきっと広がると思うの」 「かのうせいって?」 「今のりっくんの場合だったら、背が大きいりっくんになること、かな。これから背がどんどん大きくなるよ、ケンちゃんのことも抜かしちゃうよ、って言い切ることはできないけど、そうだなぁ…好き嫌いなく食べるとか、さっきいくつか挙げたでしょ。そういう、今のりっくんが頑張れることをしっかりやっていれば、そこにチャンスは十分眠ってるの。チケットは持ってるの」 「…なかなか目が覚めなかったり、遊園地の入口までの道が迷路みたいになってたりすることもあるってこと?」  私の例えにすかさず呼応してくれるりっくん、本当に六歳児か?なんて、まるで親バカ発言。保育園のお迎えタイムの今だけは、親同然の気持ちだ。おこがましいかな。でも任された以上、私にはりっくんをお()りする使命がある。  正直、さっきの例えが適切な自信はない。でもりっくんはりっくんなりに噛み砕いて、納得という名のゴールに辿り着こうとしていた。 「そうそう。…ちょっと分かりづらいかな?」 「ううん、そんなことない。分かるような気がする。僕、難しいことも分かるようになりたいもん」  やっぱりりっくんはお兄ちゃんに似ている所がある。さすが兄弟だ。今の時点で、りっくんからは賢さの片鱗みたいなものが感じられる。  りっくんはこれからどんな風に成長していくのだろう。身長だけじゃなくて、心のほうも。  やがては訪れる未来に思いを馳せながら、りっくんと相合傘で家へと向かう。  そう言えば、お兄ちゃんとは相合傘したことないな。なんてふと思ったけれど、「いや狭いだろ」と当たり前のように嫌がられそうな気がする。でもそんなお兄ちゃんも、私は好きなのだ。
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