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「りっくんに庇ってもらって、きっとあおいくんは心強かったんじゃないかな」
元気づけるように私が言っても、りっくんの顔は曇ったままだった。
きっと、庇うだけじゃ駄目だったのだろう。中身のある言葉で、言い返したかったのだ。間違っていると、ケンちゃんに言いたかったのだ。
けれどりっくんは、ふと立ち止まってしまった。ケンちゃんのストレートな問いを受けて、何が「普通」なのか、おそらく分からなくなったのだ。
「スカートを穿いてるあおいくんを想像してみたら、変だな、って、僕思っちゃったんだ。でもそれって、あおいくんじゃなくて、ケンちゃんの味方になるってことでしょ。そんなの嫌だ。僕、あおいくんのこと好きだもん」
簡単なようで難しいことを、りっくんは必死に考えた。今の私でも、難しい、と思う。いや…難しくしているだけなのだろうか。まっさらな状態で考えれば、とてもシンプルなことなのかもしれない。
「ケンちゃんのことは嫌だけど…でも確かに僕も、スカートは女の子が穿くものだって、当たり前のように思ってた。思ってたっていうか…考えたこともなかった。ピンクが好きとか、フリフリが好きとか、どうしてあおいくんは男の子なのに女の子みたいなこと言うんだろうって、心の中では僕も思ってたのかもしれない。でも、『男の子みたい』とか『女の子みたい』とかって、誰が決めたの?そういうルールなの?そのルールからはみ出したら、おかしいって思われるの?それもルールなの?」
りっくんが顔を上げた。今日初めて、まっすぐに目が合ったと思った。
煌めく水たまりのように、りっくんの大きな瞳にも空が透けていた。
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