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今まで、りっくんは私に色んなことを聞いてきたけれど、きっと今回が一番答え方に悩む質問だ。丁寧に、丁寧に、言葉を選ばなきゃいけない。
しばらく考えてから、「ちさ姉ちゃんもね、」とゆっくり口を開く。
伝えやすくするための言葉の整理が終わったわけじゃない。考えながら、話そうと思った。
「スカートを穿いてる男の子は、見たことないかな。もし見ることがあったら、ちょっとびっくりしちゃうと思う。でもね、りっくんが言ったような、守らなきゃいけないルールがあるわけじゃないの」
疑問に答え始めると、いつもりっくんはきゅっと口を結んで、真剣に耳を傾けてくれる。今日はそれがいつも以上だった。水分量の多い瞳で、じっと私を見つめている。
「『こういうことが好き』とか、『こういうことがしたい』って、人によってばらばらでしょ？例えば…りっくんは保育園のプールで泳ぐの大好きって言ってたよね」
「うん、大好き」
「でもね、ちさ姉ちゃんは学校のプールで泳ぐのが大っ嫌いなの」
「えっ、そうなの？あんなに楽しいのに？」
「私は逆に何が楽しいのか全然分かんない。でも、プールが好きっていうりっくんのことはおかしいと思わないかな。りっくんはどう？」
「僕も…何で嫌いなのか全然分かんないけど、でも泳ぐのが苦手な子もいるから、おかしくはないと思う」
「そうだよね。あと、この後家に帰ったら、りっくんはおやつに何が食べたい？」
「えーっ、そうだなぁ…ところてん食べたい」
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