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りっくんの問いに答えているようで、実は自分に対しての戒めなのかもしれないとも思った。
まるで分かったような口を利いているけれど、実際はそんなに出来た人間でもない。周囲の言葉に流されたり、固定観念に囚われたりすることが私にだってある。
普段は忘れがちなこと、見過ごしてしまいがちなことを、りっくんが気付かせてくれた。
けれど、果たしてりっくんが理解できるような説明になっていたのだろうか。話しているうちに、その矛先がだんだん自分に向いてしまっていたような気がした。
「…僕、今ちさ姉ちゃんが言ってくれたこと、ケンちゃんに言いたい。それでやっと、言い返せたことになるんだと思う。でも、僕にできるかな…」
「ちょっと、難しかった?」
「難しかった…けど、すっきりした。誰でもみんな、個性があるってことだよね。それに対して『変』とか『おかしい』とかって言ったら、言われた人は悲しいよね」
「個性だなんて…りっくん、なかなか難しい言葉知ってるね」
「それくらい知ってるもん。僕、来年小学生になるんだよ」
誇らしげな顔のりっくんが、とても頼もしかった。同時に微笑ましくもあった。
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