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今日は帰りのホームルームが少し押したのと、その後クラスメイトからの例の「どうして?」に遭い、学校を出るのが少し遅れてしまった。駆け足気味で、保育園の門をくぐる。
たんぽぽ組の教室に近付いていくと、副担任のあかね先生の隣に座って一緒に絵本を読んでいるりっくんの姿が見えた。引き戸に手を掛けた所で、二人が揃って顔を上げた。
「あ、ちさ姉ちゃん」
「ごめんねりっくん遅くなって。先生も、ごめんなさい」
りっくんに向けて両手を合わせ、先生に向けてぺこりと軽く頭を下げる。
「全然、大丈夫よ。むしろいつも学校帰りにありがとうね。大変じゃない?」
「帰宅部みたいなものなんで、全く問題ないです。あっ、りっくん、絵本ちゃんと片付けて。そのままにしちゃ駄目」
「はーい」
「もう、返事は伸ばさない」
「ねえねえちさ姉ちゃん、前はおばけ部って言ってたよ。変わったの?きたく部ってなに?」
思わず頭を抱えたくなる。あかね先生の前でその話題はやめてほしい。りっくんに被服部の実態なんて話したっけ。これじゃまるで私がオカルト研究会か何かに入っているとあかね先生に誤解されかねない。
絵本をきちんと棚に戻して、通園カバンを斜め掛けしたりっくんの手を引く。最近はなかなか口が達者になり、生意気なことも言うようになってきたけれど、私とは素直に手を繋いでくれる。まだまだ可愛いな、と私もまた素直に思う。
「じゃあ、二人とも気を付けてね」
さようなら、またね、あかね先生と手を振り合い、私とりっくんはいつものように、並んで家路につく。
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