4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

「はいみんな今配ったプリント見ることー。今度の期末テストの追試験の日程なんだが…」  一日の終わり、帰り際のホームルームでの担任の言葉に「ちょっとちょっと」と突っ込まずにはいられない。テストが始まる前から追試の話題。テスト勉強で精一杯の今、余計に気を重くさせるようなことを言わないでほしい。  私は特に理系科目が苦手で、一年生の時は数学の追試をほぼ毎回受けていた。高校の数学なんて、日常生活の一体どこに生きるというのだろう。最低限の四則演算と消費税の計算方法あたりが理解できていれば十分なんじゃないかと思ってしまう。  二年生になって、数学の訳の分からなさはますます加速している。けれどもちろん追試なんて受けたくない。  それに加えて、今回からは頼みの綱を頼れない状況と来ている。はっきり断られたわけではないけれど、どうしたって頼みにくい。向こうこそ、きっと自分の勉強で精一杯だ。  とその時、右の太腿がぶるっと一瞬震えた。スカートのポケットからスマホを取り出し、机の下でこっそり確認する。  メッセージの通知を告げるバイブレーション、送信相手と内容はアプリを開かないと確認できない。  ロックを解除して、緑色のアイコンをタップした。  トーク一覧の一番上、半藤(はんどう)(あらた)。噂をすれば、とはこのことだ。
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