4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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『今日、律のお迎え無しね。熱出して保育園休んでる。午前中は母さんが半休取って看てくれてた』  相変わらずの淡々とした口調。一大事でしょうが!とこれもまた突っ込まずにはいられない。私は高速で指を滑らせ、返信を連投した。 『熱⁉何度あるの⁉』 『お母さん、やっぱり忙しそうだね。午後は新が看病してくれてたの?りっくんを一人にするのはまずいけど、最近早退しまくってない…?いくら勉強したいからって…』 『とりあえず家には行くから。りっくんのこと心配だし』  学校を出たら、まずスーパーに寄ってポカリスエットとりんごを一個調達しよう。一応熱さまシートも買っておこうか。家にあるとは思うけど、念のため。  病院には行ったのかな。保育園で風邪でももらってきてしまったのだろうか。それとも何かの流行り病?  そんな風に頭の中でぐるぐる考えていたせいか、自分の名前が呼ばれていたことに全く気付かなかった。いつの間にか、四方八方から妙な視線を集めてしまっていた。 「今井!おい今井!」  顔をぱっと上げると、眉間に皺を寄せまくっている担任と目が合った。やばい、とは一瞬思ったけれど、それは本当に一瞬だった。すぐに意識はりっくんへと飛ぶ。  体内に侵入したバイキンマンと必死に闘っているであろうりっくん。心配だ。ただただ心配だ。  ホームルームが終わると、私は誰よりも早く教室を出て行った。
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