4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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 それなのに新は先日、七月一日が半年記念日だということをすっかり忘れていた。  別に、特別何かをしてほしかったわけじゃない。プレゼントだって何もいらない。ただ私が、「今日何の日か分かる?」と聞いた時に、「そう言えば半年だね」と言ってくれるだけでよかった。たった一言でよかった。それ以外は何も望まなかった。  記念日だとか何だとか、そういうことには無頓着そうな性格だと分かってはいたけれど、「国民安全の日」が新の返答だった。何だそれは、と思ったけれど、ネットで調べたら本当に七月一日は国民安全の日だった。  新はとにかく頭が良い。定期テストで毎回学年トップスリーの中に入っているのは当たり前、全国模試でも大体好順位。私がさっき言っていた頼みの綱というのは新のことで、付き合うようになる前からよく勉強を教えてもらっていた。  そして現在高三ということは、受験勉強真っ只中だ。私からしたら、東京タワー、もしくはスカイツリーを間近で下から見上げるような気持ちになってしまうくらい偏差値の高い大学を、新は目指しているらしい。春から予備校にも通い始め、新の勉強熱心さにはますます拍車がかかっている。  そんな状況だから半年記念日がすっぽり頭から抜け落ちてしまっても、無理がないと言えば無理がない。付き合っているとは言え、新が受験勉強で忙しいからデートなんてもうしばらくしていない。こうして新と面と向かって話すのも、だいぶ久しぶりな気がする。
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