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「良いわけないでしょ。りっくんは?今寝てるの?」
「うん、多分寝てんじゃないかな」
「多分って…」
じとりと睨むと、「まあまあそう大袈裟に騒ぐなって」と新はのんびり言いながら、別の空いているコップに麦茶を注ぎ、私に差し出してきた。
コップを受け取り、一気に飲み干す。乾いていた喉も、一瞬で潤う。
夏だな、と思った。麦茶は、夏の味がする。
「しょっちゅう熱出すのが子どもの通常運転だろ。それに朝より全然下がってるよ。三時頃測らせた時は三十七度六分くらいだったし、明日にはもうけろっとしてるさ」
「そっか…でもりっくんってそんなに熱出す子だったったけ?」
「たまたまなんだけど、律が熱出すのって大体土日なんだよ。だから千咲は知らないのかもな」
なるほど。確かに私がりっくんと会うのは、今は基本的に保育園のお迎えがある平日だけだ。保育園大好きなりっくんは、よっぽど休むのが嫌なのだろう。平日は絶対にバイキンマンを寄せつけないという意思の強さがそこにはあるのかもしれない。けれど今日は珍しく、屈してしまったのだろうか。
新と付き合い始めて、休みの日には自ずと家にも遊びに行くようになった。そこで私は、りっくんと仲良くなった。人見知りしないりっくんは、すぐに私に懐いてくれた。
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