4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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 りっくんと新のお母さんは大手食品会社に勤めていて、役職付きのいわゆるバリバリキャリアウーマンだ。仕事は多忙を極める一方で、主に延長保育制度を利用して、りっくんのことは遅い時間まで預けていることが多かったらしい。  それでも去年までは、新も協力してりっくんのお迎えに行けていた。科学部の活動日は週二回ととてつもなく緩く、中学の時に至っては帰宅部だったらしい。ちなみにお父さんのほうも仕事人間で、長期出張が多く、家を空けていることが多いようだった。  ただ、新が大学受験のために予備校に通うようになってから、状況が変わった。  学校の授業が終わった後、そのまま予備校に直行して夜遅くまで勉強してくる日が多くなった新。今までのように、りっくんのお迎えに行くことが難しくなってしまった。  延長保育の終了時刻は夜の八時。お母さんの仕事が終わるのは、その定刻をどうしても越えてしまうことが多くなり、半藤一家は頭を悩ませていた。  そんな話を新から聞いた私が、自ら名乗りを上げたのだ。「じゃあ、私がりっくんのお迎えに行く」と。
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