2人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
「今日も早退したの?」
私が聞くと、「風邪っぴきを家に一人置いとくわけにはいかないだろ。千咲だってさっきLINEで言ってたじゃん」と新は飄々と答えた。
一応りっくんのことを心配はしているんだろうけど、家で勉強が捗ってラッキー、くらいにこれもまた飄々と思ってそうだ。
授業を聞いてる時間が無駄、という何とも冷めた理由で、三年生になってからの新は学校を早退する日が増えていた。
自分の部屋で集中して勉強し、予備校の講義が始まる時間に合わせてまた家を出る。逆に先生たちに目をつけられたりはしないのかと思ったけれど、新曰く「学年主任が秀才好きだから許されてる」とのこと。新は、謙遜というものを全くと言っていいほどしない。
「一時くらいにはもう家にいたよ。母さんと入れ替わりって感じ」
「って言っても、どうせほとんど自分の部屋に引きこもってたんでしょ。ちゃんとりっくんのこと看てた?」
「受験生は自分の部屋に引きこもる生き物だろ。大丈夫だよ、たまに様子は見に行ってたさ」
「新の『たまに』は信用できないよ…」
ため息をつき、「これありがと」と飲み干したコップをシンクに置く。
りっくんが眠っているであろう寝室に向かおうとしたところで、「それ何買ってきたの」と、私の腕にぶら下がっているレジ袋を新が指差してきた。
最初のコメントを投稿しよう!