2人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
「ああ、りんごと、ポカリと、熱さまシート」
「何でりんご?…あ、すりおろすの?」
「そうそう。風邪に効くって言うでしょ。りっくん起きてたら、食べられそうか聞いてみる」
相変わらずの母ちゃんっぷりだな、と新は肩を竦めながら呟き、自分の部屋に戻るために階段のほうへと向かった。下に降りてきていたのは、喉が渇いたから水分補給しに来ただけなのだろう。
全く、付き合っている彼女を目の前にして、もう少し話をしようという気持ちにはならないのだろうか。あと、私がりっくんの母ちゃんだとしたら、それはつまり新の母ちゃんということにもなる。私はあなたの彼女なんですけど。
そんなことを若干ぷりぷりしながら考えていたら、階段を上っている途中で新がふと足を止めて、言った。
「律、ポカリよりもアクエリの方が好きだと思う」
一言そう言い残し、すたすたと二階へ上がっていった。
私の知らない、りっくんの情報。
さすが実の兄弟。謎の対抗心を小さく燃やしつつ、私もキッチンを後にした。
最初のコメントを投稿しよう!