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夕方とは言っても、辺りはまだまだ明るい。日が伸びてきた証拠だ。
春と呼ぶには遅くて、夏と呼ぶにはまだ早い曖昧な季節。でもそんな名前のない季節はほんのわずかな間のことで、幻のように通り過ぎてしまう。
なんて、普段なら深く意識もしないことを、こうしてりっくんのペースに合わせてのんびり歩いている時は、ふと考えてしまう。
「ちさ姉ちゃん、あのね」
りっくんのこの「あのね」は、今日の出来事を話し始める合図だ。
私は視線を下に向けて、「うん?」と聞く体勢を整える。まだ六歳だから背が低いのは当たり前だけれど、たんぽぽ組の中でもりっくんは一際小柄だった。
いつか、私の身長を抜いてしまう日が来るんだろうか。それだけならまだいい。思春期なんてものが訪れた日には、ウザいだの何だのと言われて鬱陶しがられてしまうのだろうか。
考えたくない、と言わんばかりに、私は繋いだ手にぎゅっと力を込めた。大丈夫、りっくんの手はまだこんなに小さい。今からそんな先のことを心配してどうする。
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