1.どうして嫌いな食べ物も残さず食べなきゃいけないの?

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 夕方とは言っても、辺りはまだまだ明るい。日が伸びてきた証拠だ。  春と呼ぶには遅くて、夏と呼ぶにはまだ早い曖昧な季節。でもそんな名前のない季節はほんのわずかな間のことで、幻のように通り過ぎてしまう。  なんて、普段なら深く意識もしないことを、こうしてりっくんのペースに合わせてのんびり歩いている時は、ふと考えてしまう。 「ちさ姉ちゃん、あのね」  りっくんのこの「あのね」は、今日の出来事を話し始める合図だ。  私は視線を下に向けて、「うん?」と聞く体勢を整える。まだ六歳だから背が低いのは当たり前だけれど、たんぽぽ組の中でもりっくんは一際(ひときわ)小柄だった。  いつか、私の身長を抜いてしまう日が来るんだろうか。それだけならまだいい。思春期なんてものが訪れた日には、ウザいだの何だのと言われて鬱陶(うっとう)しがられてしまうのだろうか。  考えたくない、と言わんばかりに、私は繋いだ手にぎゅっと力を込めた。大丈夫、りっくんの手はまだこんなに小さい。今からそんな先のことを心配してどうする。
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