4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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 コンコン、と軽く二回ノックしてから、寝室のドアをそっと開ける。  窓際のベッドの上、仰向けの姿勢で、りっくんは眠っていた。  顎の下まで布団を掛けているその姿はなんだかミノムシみたいで、こんな状況でも私はつい可愛いと思ってしまう。 「ちさ姉ちゃん…?」  ぱちりと目を開いたりっくんが、少し(かす)れ気味の声で呟いた。 「あっ、ごめん起こしちゃった…?」と私は慌てつつ、ベッドの傍に静かに腰を下ろした。 「ずっと寝たり起きたりしてて、今は起きてたから大丈夫だよ」 「そっかそっか。具合はどう…?まだ辛い?」 「ううん、午前中と比べたら全然平気。でもちょっとだけ身体が重いかなぁ…あと喉もちょっと痛い」 「じゃあもうちょっと横になってたほうがいいね。熱も測ってみよっか」  サイドテーブルの上に置かれている体温計に手を伸ばす。それに(なら)って、りっくんも上体を起こした。  思っていたよりも元気そうで良かったけれど、それでもいつもと比べたら、心なしか身体が小さく見える。  りっくんが脇に挟んだ体温計は、三十七度二分を表示したところで電子音が鳴った。 「どんどん下がってる」  りっくんが嬉しそうに呟く。  これもう剥がしていいかな?とおでこに貼られていた熱さまシートを指差したりっくんに、私はOKサインを出した。  とは言え油断は禁物だ。私はもう一度りっくんをベッドに寝かせて、布団をかけ、その小さな身体をしっかり守った。
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