4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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「分からない言葉は分かるように説明してあげるの。あとね、りっくんなりにきっと気を遣ってるんだよ。新が知らない間に、りっくん、どんどん成長してるよ。まだ六歳、って思わないほうがいいよ。もう、自然に人に気を遣える年齢なんだよ」 「律は変な所だけ大人びてるんだよな」  いや、絶対に幼少期の新のほうが子どもらしくなかったに決まっている。高二以降の新しか私は知らないけれど、何となく幼い頃も想像できてしまう。そしてそれはおそらく当たっているんじゃないかとも思う。周りの大人が思わずたじろいでしまうような、そんな新少年だったんじゃないだろうか。 「…とりあえずこれからりっくんの所に行くから、誤解だよって私から言っておくけど。後でちゃんと新の口からも説明してね?じゃないとりっくん、安心できないよ?」 「分かったって」  新の視線はもう手元の参考書に落ちていた。暗号にしか見えない数式が羅列されているそれを奪い取って、窓の外に放り投げてしまいたい気持ちをそっとこらえる。
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