1.どうして嫌いな食べ物も残さず食べなきゃいけないの?

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「今日ね、ゆうこ先生に怒られたの」  ゆうこ先生とは、たんぽぽ組の主担任を務めている先生だ。  ほんの少し不満げな顔を浮かべているりっくんに、「そうなの?何で怒られたの」と問う。 「給食でね、えっと…ほうれん草と、黄色いつぶつぶ…とうもろこしかなぁ?それと、小っちゃいお肉みたいなのが入ってるやつが出てきたの。それ、今まで出てきたことなくて、でも、僕ほうれん草嫌いでしょ?だから食べれなくて」  りっくんの拙い説明から推理すると、おそらく給食で出てきたのはほうれん草のソテーか何かだろう。小っちゃいお肉はきっとベーコンのことで、黄色いつぶつぶはコーンだ。とうもろこし、正解。  年齢の割りに、りっくんは食べ物の好き嫌いが少ないほうだと思う。けれど確かにりっくんはほうれん草が苦手だった。前に夜ごはんでシチューを食べた時、りっくんは他の野菜と鶏肉だけを拾って食べていた。あの時は仕方なく、私が残ったほうれん草を食べてあげた。 「でもね、ちゃんと全部食べなさいってゆうこ先生に怒られたの。怖かったけど、僕、いつもは残してないもんって言った。でもゆうこ先生まだ怒ってて、今日はほうれん草残してるじゃないって。ねえ、どうして嫌いな食べ物も残さず食べなきゃいけないの?」  出た、と思った。  今日も出た。りっくんの「どうして」。
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