4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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「そうそう、そんな感じで、お兄ちゃんは今、ほぼ毎日、大学に行くための勉強をする塾みたいな場所に通ってるの。それが今年の三月からで、だから学校終わった後なかなか時間が取れなくなって、お兄ちゃんがりっくんのお迎えに行けなくなっちゃったの。お母さんとお父さんも、お仕事忙しいでしょ?だからね、私が代わりにお迎えに行くことになったんだよ」  りっくんは「そっか…」と小さく呟いたけれど、その表情はまだ完全に晴れたとは言えなかった。  とんとん、とりっくんの背中を優しく叩く。りっくんが、思っていることを我慢せずに打ち明けられるように。そんな思いを込めて。 「…僕とお勉強だったら、お勉強のほうが大事なの?」  背中に伸ばしていた手で、そのままりっくんの身体ごと抱きしめた。もう片方の腕も、その小さな身体に回す。お皿を手に持ったままりっくんは、「ち、ちさ姉ちゃん、危ない」と少しびっくりしていたけれど、私は構わず両腕にぎゅっと力を込めた。 「そんなことないよ。絶対、そんなことない。でも、お兄ちゃんの代わりに謝る。ごめんね、りっくん。寂しい思いさせてごめん」
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