2人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
私の腕の中、至近距離でりっくんが見上げてくる。相変わらずの、ビー玉みたいな大きくて澄んだ瞳。
りっくんは小さく首を振った。
「…お兄ちゃんは、今、頑張らなきゃなんだよね」
「…そうね、次の春までは、集中して勉強しなきゃいけないみたい」
「夢を叶えるために、お兄ちゃんは大学に行って勉強するの?」
「夢かぁ…うん、そうかもしれない。お兄ちゃんはどうしてもその大学に行きたいみたいだし、きっとお兄ちゃんなりの目的があるんだと思う。大学で勉強したことを、お兄ちゃんは確実に未来に繋げていくんだろうなとも思うよ」
話しながら、新の将来の夢って何なんだろうと、ふと思った。考えてみれば、そういう話は今まで新としたことがなかった。
するとりっくんが言った。
「お兄ちゃん、研究者になりたいって言ってた」
「研究者…そうなの?」
初耳だった。
「何の研究?」
「えっ、分かんない。そこまでは教えてくれなかった。でも僕、すごいなぁ、かっこいいなぁってほんとに思った」
ロボットだったか人工知能だったか、そういった系統に興味があるようなことを前に新は言っていた気がする。でも私からしたら全くもってとんちんかんな分野だから、話を聞いていても右から左へすり抜けていってしまった。新がやりたがっている研究というのも、それに関わる何かなのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!