4.お兄ちゃんは僕のことが嫌いなの?

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「去年の七夕だったっけ。りっくん、保育園で短冊に『お兄ちゃんみたいにかっこよくなりたい』って書いたんだよね」 「うん。自慢のお兄ちゃんだもん」  歳が離れているからこそ、りっくんにとって新は尊敬の対象にもなるのだろう。そして新のことが大好きで大好きでたまらないのが、ひしひしと伝わってくる。だからこそ、新と接する時間が前より減ってしまっていることが、りっくんにとっては悲しいのだ。 「…私もね、最近はお兄ちゃんとゆっくり話せてないんだ。やっぱり、寂しいなって思うよ。だからりっくんの気持ちはちょっと分かる」 「ちさ姉ちゃんも、寂しいの?」 「もちろん。でもね、新のことを応援したいとも思う。だから今は、寂しくてもちょっとだけ(こら)えて、新の分まで、りっくんと一緒にいようって思ってる。何なら新がちょっと羨ましくなるくらい、りっくんともっともっと仲良くなっちゃう」  さらにぎゅうっと抱きしめると、「苦しいよー」と言いながらりっくんがけらけらと笑った。このあどけない笑顔を束の間独り占めできてしまうなんて、何て贅沢なんだろう。  両腕をりっくんの身体から離し、今度はマシュマロみたいなそのほっぺたを、指でつまんでふにふにと触る。「ちさ姉ちゃんってばー…」と、りっくんは困りながらもされるがまま。どこまで行っても、りっくんは本当に可愛い。
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