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「でも僕、お兄ちゃんから恨まれないかな?」
「えっ、どうして?」
「彼女を横取りされた、って思われてたらどうしよう」
りっくんは至って真剣なのかもしれないけれど、そのおませな一言に、ちょっと笑ってしまいそうになった。
そう言えば、りっくんは好きな女の子とかいるのかな。もう六歳だ。一人や二人、いてもおかしくない。二人はまずいか。
「もしかして、私ってモテモテ?」
「お兄ちゃんと、僕?」
「うん」
「ちさ姉ちゃん、可愛いもん」
きゅうっと音を立てて、胸の中に何とも言えない甘酸っぱさが広がっていく。六歳の男の子から言われる「可愛い」が、こんなに嬉しいなんて。というか、肝心の彼氏である新からは「可愛い」と言われたことがないような。気付かなくてもよかったことに気付いてしまった。
「…僕も、お兄ちゃんのこと応援したい。お兄ちゃんの夢、叶えてほしいもん。だから…寂しくても、嫌われてるのかなとか、そういうこと思わないようにする」
「お兄ちゃんがりっくんのこと嫌うわけないから、そこは絶対に安心して大丈夫だよ。お兄ちゃんのこと、一緒に応援してあげよう?」
頷いたりっくんの顔から、ようやく曇りが消えてくれた。
もう一度抱きしめようとしたら、りっくんは空になったお皿をサイドテーブルの上に置いて、両腕をぱっと広げた。
もう、本当にたまらない。
さっきまでは手が塞がっていたから出来なかったけれど、今度はりっくんも抱きしめ返してくれた。
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