1.どうして嫌いな食べ物も残さず食べなきゃいけないの?

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 りっくんと話していると、ここ最近は色んな疑問を投げかけられる。「何で?」「どうして?」がりっくんのもっぱらの口癖だ。子どもらしいと言えば子どもらしいのかもしれない。  けれど、何を聞かれても、どんなにしつこく聞かれても、面倒臭がっちゃいけないと思っている。相手が子どもだからって、適当に答えちゃいけない。  りっくんが納得するような回答を導き出すために、私はいつもそれなりに頭を悩ませる。 「そうだねぇ…食べ物にはね、何でも栄養があるの。栄養って分かる?」 「僕を大きくするためのもの?」 「そう。りっくんの身体がぐんぐん大きくなって、風邪にも負けないくらい強くなるためには、栄養が必要なの。だからね、嫌いな食べ物を食べるのは大変かもしれないけど、後々りっくんのためになるんだよ」 「注射みたいなもの?」 「注射?」 「僕、注射も嫌いだけど、でもあれも身体を丈夫にするためのものなんでしょ?すごく痛いし、怖いけど、僕我慢してる」 「そうだね、こないだ注射した時も泣かなかったって言ってたもんね。偉いよりっくん。確かに、嫌いな食べ物を食べなきゃいけないのも、それと同じだね」  分かりやすくするために自分から例を挙げてくれたりっくんを、私は賢いと思う。やっぱり血は争えない。  あれ、でも「血は争えない」って、親子の場合で使う言葉だったっけ。前に現代文の授業で先生がそんなようなことを言っていた気がする。きょうだいの場合では使わないのか。
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