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「僕、ほうれん草食べれるようになりたい。いや、なる。なるもん」
りっくんなら、そう時間がかからず食べられるようになるだろう。私がりっくんくらいの年の頃は、もっと好き嫌いが激しかった。ピーマンもネギもトマトも食べられなかった。もう覚えていないけれど、私も同じように保育園の先生から怒られていたのかもしれない。
私は空いている方の手で、りっくんの小さな頭を黄色い帽子越しに撫でた。
「偉い、りっくんは本当に偉い」
ゆうこ先生に怒られてへこんでいたりっくんを、今度は私が褒めてあげる番だ。
ようやく笑顔を取り戻したりっくんだったけれど、「じゃあ、ちさ姉ちゃん、ポッキーも食べなきゃだめだよ」といきなり言い出した。
りっくんの中では脈絡があるんだろうけど、何がどうなって「じゃあ」という接続詞が選ばれた?それって順接だよね?でも今の所繋がりが全く見えない。
「んーと…ポッキー?」
「前に一緒にお菓子買いに行った時、私ポッキーってあんまり好きじゃないのって言って、トッポ選んでたよ。好き嫌いしちゃだめだよ」
「あー…まあ、うん、そうだね。好き嫌いっていうか、好みの問題なんだけど…」
後半の語気が失速する。りっくんにどう説明したら上手く伝わるだろう。
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