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物心がついた頃には、いつも隣りにあいつがいた。サラサラの黒髪で、肌の白いあいつ。性別は違ったけれど、一人趣味の多い私にとって、あいつは家族のような存在だった。私はいつしか、あいつに〝好意〟を抱くようになっていた。
中学校にあがると、思春期を迎え、恋愛や勉強など、悩みごとが増えるようになる。私も例外ではなかった。仲の良い同性の女友達にすら打ち明けられない、家族にすら打ち明けられない悩みごとを、私はあいつの身体に触れながら話した。互いに身体を寄せ合いながら、私とあいつは触れ合った。あいつは静かに私の話を聞いてくれた。
高校生になると、いたずら好きでやんちゃなあいつも成長したのか、あいつはふざけることも減り、大人しくなった。私にはそれが少し、寂しかった。
大学受験を控えた高校3年の秋、通っていた学習塾から帰宅した私は、玄関先で2つ上の姉からあいつが死んだことを聞いた。同じ時間が同じ長さではないということを、私はようやく理解した。いつしかあいつの黒髪は、滑らかさを失っていた。
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