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 222X年、世界はゲノム編集の時代になっていた。 「ねえ、もうゲノムン、決めた?」というのが、ゲノム編集年齢の三歳児の挨拶がわりだ。  ゲノムというのは、ある生物の遺伝子情報のことであり、ゲノムンとは、他の生物の特徴を自分のゲノムに取り入れることだ。ゲノムンすることで、人間は他生物の特徴を手に入れることができる。  ゲノム編集が流行しはじめたきっかけは、約一世紀前にデザイナーズベビーが解禁されたことにさかのぼる。  優良とされる遺伝子情報を受精卵に組み込むことにより、知力や体力の向上、病気への耐性、遺伝病の回避などが可能になったのだ。  そしてデザイナーズベビーが一般的になると、人気の遺伝子はほぼ固定化してきた。 『健康で、頭がよくて、運動神経がいい赤ちゃんを!』  古今東西、人間が子どもに望むことに大差はない。  能力の格差や個性が次第になくなっていくのに、時間はあまりかからなかった。  すると人間とは欲深いもので、「人よりもっと能力を! そしてもっと個性を!」と願わずにはいられなくなったのだ。
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