帰国

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帰国

㈠ 大学四年生 後期 ① 英語が流暢に話せて、友達がいっぱいいて、髪の毛は根っこからきれいに染まった栗色で、お化粧は何パターンか使い分けられて、サマンサのバッグの中にはmiumiuの財布。ガーリーな服装のときもあれば、たまにはフェミニンなのも着こなせたり。 高校のころ、何か月分かお小遣いを積み立ててまで買ったローリーズファームやアースの服はクローゼットの奥にある。 たぶん今のわたしは大学に入る前に思い描いていた姿そのままで。でも今のわたしはそんな自分が相変わらずぜんぜん好きになれていない。理想を追求しているときは特に深く考えることはなかった。バイトで貯めたお金を自分のステータスに投資していくのはゲームみたいで楽しかった。 でも九か月の留学を終え、カナダから日本に帰る今、信じられないくらい不安な気持ちに押し潰されそうになっている。 今まで目の前のことに集中して省みる暇がなかったからだろうか、わたしは今になって自分が有意義な時間の過ごし方をしてきたという自信がない。 わたしの持病みたいなこの気持ち。この虚無感と劣等感と不安感と疑心感をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせた感情を最も味わっていたのは、思い出すだけで胃がきゅっとなるくらい痛々しかった高校生のころのことだ。
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