2.異形

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2.異形

 ゆっくりと闇の中へ落ちる赤い雫。  緩やかな風が甘い芳気を拡散させていく。  ある者は目を虚ろにさせ、ある者は緩んだ口から涎を零す。  心を惑わせ狂わせる匂いに抗う術はない。  たとえ辛うじて自我を保つ者がいたとしても、月が照らし出す白く艶やかな首筋からは目が逸らせはしないだろう。  掴めば壊してしまいそうなほどの華奢な肩。  襲われると分かっていても、女は自らの身体を傷つけ血を流す。  退路を断たれ、手練れ立ちに囲まれようと気にする者はいない。  見えているのは女の白い項だけ。  今宵も異形の者たちは、甘い香りに誘われ砂と化す。
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