31人が本棚に入れています
本棚に追加
傷はさほど深くなく、落ちる血も大した量ではない。
だがポタッと落ちる度に増える人影。まるで血の匂いを嗅ぎつけたサメのように集まってくる。
一人が獣のような雄叫びをあげた。
月明かりが見せるその顔は異形の者。姿形は人間と同じ。
だが目が血走り赤い瞳に見えた。
口は半開き。涎を垂らしている者までいる。
女が服の襟を押し下げた。
白磁器のように艶やかな首筋と肩が露わになる。
髪を片方に寄せ首を傾げれば、異形の者たちが地面を抉るようにして飛びかかってきた。
最初のコメントを投稿しよう!