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獣のような咆哮が空気を震わした。
元から赤い瞳が血走り、更に色濃く染まっていく。
鮮血のような綺麗な色ではない。流れ落ちた血が時間と共に、暗い赤へと変化したような朱殷色。
短い髪は逆立ち目が吊り上がっていく。
まるで鬼のような形相へと変貌していった。
「まだいたか」
言葉を発した者を照らすかのように、雲間から月が顔を覗かせた。
白銀のように輝く髪が、高い位置で一つに束ねられている。腰に達するほど長く真っ直ぐな髪。
仮面で顔は分からないが、男であろう。身体の線を拾う黒服が、厚い胸板を強調していた。
「お前が殺したのか」
銀髪の男は肯定も否定もしない。
だが構えた刀から滴り落ちる血。他の仮面をつけたどの者たちより、刃先が赤く染まっていた。
「ぶっ殺してやる!!」
伐夜の足が地面を抉る。
そこへ横から飛び出して来た者がいた。目の前に迫る血塗られた刃先。とても避けられるものではない。
だが伐夜は拳で相手の腕を地面に叩きつけた。
暗闇を引き裂くような悲鳴が響き渡る。
「雑魚は引っ込んでいろ」
熱くなっていく伐夜に反し、銀髪の男は微動だにしない。
傷ついた仲間を一瞥すらしなかった。
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