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そうそう、そう言えば、まだ小さかったころ、こんなことがあった。
タオのお母さんがタオをつれてうちに遊びに来た。そのころ、タオのお母さんはしょっちゅううちに遊びに来ていたんだ。タオを、専業主婦だったあたしのママに預けて、自分は仕事に行くことも、何度かあったっけ。
で、その日、おしゃべりに夢中になっている双方の母親をおいて、あたしはタオを外へ連れ出した。近所の子供たちも何人か出ていて、いっしょに遊んだ。
そのうちいじめっ子がやってきて、タオにちょっかいを出そうとした。あたしはそいつをのしてやった。空手を始めたばかりのころだった。
そしたらタオのやつ、感謝するどころか、
――咲ちゃん、友だち、いじめちゃダメだよ。
なんて言った。見当外れもいいところだ。
あたしは、
――うるさいっ。やられる前にやるのよっ。
って言って、タオの頭に、軽くゲンコをくらわせてやった。
タオは目に涙をためて、でもぜんぜん反撃してこなかった。
まあ、昔から根性のないやつだったな。
さて、今日はそんなタオを従えて、いくつか夏物の洋服を買った。買ったものはもちろん、タオに持たせた。あたしは女主人さま、タオは忠実な召使い。それがあたしたちの関係だ。
バス停からマンションに向かう途中に、小さな公園があるので、そこのベンチで休んだ。そんなに大きな公園じゃないけど、地震なんかが起こったときの、一時避難場所に指定されている。あんまり手入れされていないみたいで、公園の周囲をぐるりと囲む木は、枝葉が生い茂って、まわりの道路が見えないくらいになっている。外と遮断されて、公園のなかはひっそりとしている。
あたしは、ちょっぴりタオをからかってやりたくなった。
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