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「この公園て、防犯カメラ、あんまりないんだよね。このベンチだって、ぜんぜん範囲外だし。それに、木が茂ってるから、公園の外から見づらいでしょ? ここでなにかしてても、誰にも見つからないかもね」
それだけ懇切丁寧に言ったら、普通はわかりそうなものなのに、タオがなんて答えたかというと、
「ふーん」
と、それだけ。
なによぅ、あんたって鈍いわね。誰にも見られてない、って言ってるのよ。こういうシチュエーションで、男の子は女の子にチューを迫ってくるもんでしょ、普通。
もっとも、本当にチューしようとしたら、キンタマ蹴り上げてやるけどさ。
念のため、ちょっと待ったけど、タオはぜんぜんケダモノにならない。あきらめて、帰ることにした。
そのときだ。
あたしたちの前に、すっと人影が立ちはだかった。気配もなく、気がついたら、あたしたちは五人の男たちに囲まれていた。
五人とも、いやな雰囲気をまとっていた。歳は二十代とか三十代とか、そんなもの。背の高いのもいれば低いのもいる。太りぎみのもいればやせぎみのもいる。服装だって、背広にノーネクタイとか、ジャンパーとか、バラバラ。でも、いやな雰囲気はどいつも同じだった。町のチンピラがニヤニヤ笑いながらちょっかいをかけてくる、というのとは桁が違う感じだ。男たちはひとりも笑っていない。あたしたちを見すえる一方で、あたりを見回している。
なによ、あんたたち。
思わずそう文句を言おうとするより早く、なんと、タオがあたしをかばうように前に出た。
バカ、あんたなんて引っこんでなさいよ。そう言いそうになる。タオの背中がふるえているのがわかる。
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