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ひなどり
【ひなどり】
「これ、大磯の兄貴からぼっちゃんに」
そう言って、田中という男が俺に小包みを差し出した。
田中は大磯の右腕だ。俺はあからさまに嫌な顔をして無視をする。
俺の誕生日だからだ。
17年間一度も欠かさず大越はこんなものを送ってくる。
昔は大越自身から。
あの事があってからは人づてに。
そしてそれはいつも返却だ。
「ねえ、お願いしますよ、受け取ってもらわねえと俺が叱られます」
「いらねえ。お前も毎回毎回しっつこいんだよ!解るだろ、捨てとけよ、俺にこんなもん見せんじゃねえよ!」
「ぼっちゃん」
「あいつの触ったもんなんて腐ってんじゃねえのか」
「ぼっちゃん!あんたなんてこと」
ぐっ、と腕を掴まれる。それを思いきり振りほどく。田中はよろめきもしない。それが俺をもっと苛々させる。
なんで俺は子供で、弱いんだ。
むかつく、イライラする、訳もなく苛々する。
「勝手に俺の部屋に入んじゃねえ、出てけ、命令だ、出てけよ!」
「なんでそんなに兄貴を嫌うんですか、あの人は姐さんとぼっちゃんの為に身を粉にしてる方なんですよ。子供みたいな事ばっかり言うのも」
「うるっせえなあ!」
ばん、ばん、ばん、机を叩く。むしゃくしゃする。
そしてあの映像が嫌でも頭に浮かぶ。
ぬらぬらしてるあいつの体だ、女みたいに突っ込まれて、気持ちが悪い、ああ、嫌な物を思い出したじゃないか。
俺は険しい顔をしている田中に負けず劣らずの凶悪な顔をしてるんだろう。そのまま唇を吊り上げて笑ってやった。
「なんでそんなに、だって?いいか馬鹿、バカタナカ、お前が兄貴っていう奴はなあ」
女みたいに突っ込まれるのが好きな奴なんだよ、俺は見たんだよ、そんな奴を好きになれってか、いいや俺は好きになるもんか、気持ち悪い、あいつは気持悪い!
そう叫んだら田中はポカンと口を開けたが、すぐにはっと気がついて、悲しい目を俺に向けた。
「もしやそんなことを兄貴に直接言ったんじゃないでしょうね」
言ったよ、と吐き捨てると、ぱしん、と田中が俺の頬を叩いた。
あんたはひどい、ひどいおひとだと田中は少し唇を噛んで唸った。
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