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男が好きな男が権力者だった。組を守るためだと、体を提供しただけだ。
先代が、姐さんが、そして大磯を父親のようにしたってくれる雅哉が大好きだった。
だから、身を粉にして働こう、なんに変えてもと思った。大磯には学がない。
良くも悪くもこの体しかないのだ。
そうやって守ってきた。
あの日は父の日で、体を弄んだ男が帰った後に寝室の前に転がっていた手作りのペン立てを大磯が見つけた。
ああ、見られてしまったのだ、そう思った。
きっと、醜悪な自分の姿は嫌われるだろうなと感じた。
大越は深い、ため息が出た。
だが、きっと、無様に追い出されるまで、自分はここにいるのだろう。
みみずは醜悪で、目も、手足もない生き物だが、みみずは土を豊かにするのだ。
それがいなければ、作物は大きく育たない。
(坊ちゃん、あなたが大きくなったなら私を追い出しても構わない。私をうんと嫌えばいい。それを糧に大きくなってくれるのならば)
それまでは自分があなたの居場所を守ります。
みみずは、それを望んでいるのだ。
みみずはおめめがありません
みみずはてあしもありません
うごめいて、ただあなたにえいようを
あなたにさちあれと
そうねがってなりません
みみずはつちのなか
あなたのしあわせをねがって
みえないおめめであなたのおかおを
おもいうかべます
みみずはあなたにさちあれと
きょうもねがっているのです
【みみず】
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