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「あの、ぼっちゃんその頬」
「関係ねえだろ。お前うぜえんだよ。父親面しやがって。ほら早く行けよ」
「は」
がつん、と昌哉の投げた財布が大磯の顔に当たった。
「車!歩いて行かせんのかてめえは!」
「は…すみません」
おかしい、そう思いながらも足早に昌哉の前を通り過ぎようとしたら、何かが自分の足を引っかけた。
あ、と言う前に無様に転んだ大磯のケツを容赦なく昌哉は蹴り上げた。
転ばせたのはもちろん昌哉であるが、そんな事はどうだっていいのだ。
「なに転んでんだよ、さっさと行け!ぐず!」
「すみま」
「申し訳ありませんだろ」
「…申し訳ありません。」
理不尽な行為にぐっと耐えて出ていく大磯には、自分の背中を昌哉が複雑な目で見ている事なんて解らないだろう。
関係ないじゃん。
俺に関係ないじゃんか。
俺の為に、お袋の為に、体を張って守ってる、そんな事知らねえよ。
お前の勝手じゃんか。
「そんなの知ってもどうしろっていうんだよ、バカタナカ。」
昌哉がぼんやり呟いた事は大磯に伝わらない。
昔、昌哉が大磯の姿を見て嫌悪感を覚えたのに理由を言われただけで、自分の中で違う感情が生まれた事だって言わない限りなんにも伝わらない。
どうするべきなのだ、昌哉は天を仰いだ。
所詮俺は雛
鳥の雛
口を開けて飯を待っていて、
口を開けた時に入ってきたミミズが
喜んで食われたがっているなんて
そんなの知る訳ないじゃん
そんなのそっちの勝手じゃんか
俺に関係ないじゃんか
【ひなどり】
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