子どもの頃のトモ...ダチ...

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黒い。暗い。何も見えない。 だけど、音は聞こえる。耳触りの悪い音だ。耳を塞ぐ。聞きたくない。聞いてしまったらきっと、それに飲み込まれてしまう。 『カオル』 不意に、名前を呼ぶ声が聞こえた。 顔をあげた。塞いでいた耳から手を離し、いつの間にかつぶっていた目も開けていた。 黒が、青に変わっていた。日の当たった深い海のように澄んだ色だ。 『カオル』 また、聞こえた。目の前の青色のように、澄んだ音だ。まるで、全てを包み込んでくれるような、すくってくれるような。 それに、手を、伸ばす... 目が覚めた。 夢を見ていた気がする。あまり覚えてないけど。おそらく時々見るのと同じようなもので、子どもの頃の夢だ。そんな悪い夢を見た後はいつも突然目覚める。これ以上嫌な思いをしないよう、自分で自分を守るように。 だけど、今日は少し違う。目覚めるのが惜しかった気がする。こんな気分になるのは、初めてことだ。 原因は、一つしかない。彼だ。今までと違うのは、彼と会ったことだけだ。 彼は、僕にとってどんな存在だったのだろう。 気になった。だけど、それを突き詰めるには、子どもの頃のことを思い出さなければならない。それは嫌だ。嫌な思いをするのは御免だ。 だったら、もういい。彼と会うことはこの先ないし、所詮、忘れてしまう程のものだ。 僕はそう言い聞かせ、勢いよくベッドから降りた。 時刻は午前七時過ぎ。二時間も眠れなかった。
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