怨霊に憑りつかれた

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 部屋の掃除はロボット掃除機ルンルンに任せきりで、だんだんと埃が目立って来た。ごみ捨てだけは生来の汚物アレルギーが幸いして、コマ目に行うので、ごみの詰まったコンビニ袋に囲まれるごみ屋敷化だけは、どうにか免れていた。  そんな慎哉が生きてることを実感するのがゲームタイムだ。ゲームと言っても極度の人間不信に陥っているため、SNS系やオンラインアクション系はネットの先の人を意識して入り込めない。  もっぱら慎哉が熱中しているのが、CPU相手のシュミレーションゲームだ。  慎哉はパソコンに強い。  中一のときに初めてPCを買って貰って、既に四代目となる愛機には、受験勉強の合間をみては、改造を重ねた戦国シュミレーションゲームがセットアップされている。  自分で追加した千を超えるオリジナルイベンの中には、人間ドラマが再現できるように、恋愛、友情、家族愛、裏切り、憎しみなど様々な要素が散りばめられている。  僕は自分で設定した虚構の世界に、今夜もどっぷりと嵌っていく。  今夜も改造した戦国ゲームを楽しんでいる。  お気に入りの戦国武将は何といっても織田信長。  であるか――凡人には理解されない孤高の天才が、今夜もクールに天下取りを目指す。  快調にゲームを進めていると……  是非もなし――本能寺の変イベントが突然発動した。このゲームのイベント発動パラメーターは乱数で変動するため、改造した慎哉自身にも予測不可能な面がある。  やっちまったなと、ここ数日間心血を注いだ天下取りの軌跡を思い出しながら、信長との別れを惜しむ。  まだリプレイ可能かと、時計を見ると時刻は既に二時を回っていた。
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