怨霊に憑りつかれた

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(あまり気が進まぬが、こうなった以上お主に憑依しよう) 「ヒッ! ひ、ひょういー」  慎哉の叫びとほぼ同時に、信長の身体がかぶさって来て、その姿が視界から消えた。 「ウッ、ギャアー」 (僕の記憶が、生まれてから今日までの僕の記憶が、全て引き出されるー)  例えれば、ファイルコピーされるかのように、慎哉の大脳に眠る全ての記憶が、もう忘れたと思っていた記憶迄、根こそぎ引っ張り出されて、信長にインプットされていく。 (今度は信長の記憶が入りこんで来るー)  慎哉の記憶のインプットが終わると、信長の生まれてから本能寺で死すまでの記憶が、同じように慎哉の大脳にインプットされていった。  その記憶のあまりの凄絶な内容に、慎哉は耐えることができなくなり、ついに気絶した。  目が覚めると、パソコンの前に座って何かを調べている自分の身体が見えた。 (どうして? 鏡を見ているように自分の身体が見える!)  それは鏡とも違う、自分の身体を真上から見下ろした光景だった。 (ウワー、どうなってるんだ!) (あれは僕の身体で、でも僕は僕を外から見て) (分からない、助けてくれー) (ええい、うるさい。いくら魂の叫びでも、こう喚かれては気が散ってしまう)  突然、先ほどの信長の声が届いた――なぜ身体の外にいるのに聞こえる?
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