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ジーンの即答に、デュマの口角が僅かに上がる。デュマは人の悪そうな笑いを顔に浮かべると、ジーンに改めて向き直った。
「ふむ。ではジーン、この施設について何を知っているか、答えてみよ。所長の私自ら試験してやる」
その問いにジーンはまたもや迷わず答えた。一瞬の躊躇いも見せず。心を凍らせて。
「表向きは、難民収容所。ですが、その裏で、難民を被験体とした人体実験を行う研究所であると聞いています」
ジーンの淡々とした返答を、デュマは薄い笑いで受け止めつつ、次いでジーンに問いかける。
「我が軍の情報統制もたいしたことないな。ジーン、その情報はどこで耳にした?」
「前赴任地です。私は先日までバイカリスク基地の軍医でした。そこでは下級兵士はともかく、軍の尉官以上の人間なら、誰もが噂にしていたことです」
「そこまでとはいえ情報が漏れているとは遺憾なことだな。……だが、なら説明が省けて良い。ジーン、君のここでの仕事は、ならば、分かるな?」
いつの間にかにデュマの顔からは笑いが消えている。その鋭い眼光に気圧されそうになり、思わず、ジーンは短く肯定の意を述べるに留めた。
「……はい」
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