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深い深い繭の中にいたのです。 夢見心地でうとうとと、ずっとそこにいたのです。 どんな痛みからも、哀しみからも守られて。 『可哀想』という同情の言葉や、みんなの好意を受けながら、私は優しい繭のベッドにいつも寝そべっていました。 反対に傷つけられ続けている誰かのことを、考えもせずに。 虐げられてる誰かに、その誰かにこそ、守られているとも知らずに。 苦しみ、もがき、のたうち回りながら、血を流しながら、それでも彼は、私にそんな素振りも見せず。 いつも笑って、悪戯な目で、私を優しく包んでくれました。 今度は私が守る番。 ねえ、そうでしょう? 優也。 優しい繭。 それが貴方と、気づいたならば。  
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