14人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
伝承
伝承が、ある。
後漢桓帝の延熹年間。河東郡解県の小さな寺に、囲碁好きの和尚がいた。
この和尚の元に、美しい髭をたくわえた偉丈夫が、ある日訪ねて来た。彼も碁を好むと言う。喜んだ和尚は、その男を歓迎し、早速二人で碁を打ち始めた。
両者の実力は伯仲し、なかなか決着がつかない。朝から夕方まで碁を囲み、翌日、翌々日と勝負を持ち越しても対戦は続いた。結局、彼らの対局が終わったのは、一か月後だった。勝者は、美髭の男である。最後はあっ気ない幕引きで、和尚は些細な不注意で負けた。
「……どうされた、和尚。今日は調子が悪かったのかな」
男は豊かな髭を撫で、和尚に眼差しを向けた。よく見ると、その顔はずいぶんとやつれていている。
最初のコメントを投稿しよう!