ほたるのゆめ

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そのあと何か取り繕ったのは覚えてるけど、何を言ったかまでは覚えていない。でもそれから彼と話すようになって、友達になることが出来た。 でもなんで、彼女持ちの人に恋をしたんだろう? 今まで一度もそんな事無かったのに・・・。 そう思っても一度恋をしてしまった僕の世界は輝いたままだ。だからと言って、いくらそういうことに抵抗がないと言っても、彼女持ちと寝ることは出来ない。なので、僕は世界を輝かせたまま、彼の友達でいた。 でも実は、その後すぐに彼は彼女と別れてしまったのだけど、その時はもう僕は彼に告白することが出来なくなっていた。なぜなら彼は、オメガ嫌いだったから。 何気ない会話で、彼女の性別がベータなのだという話になった。なぜその話になったのかは忘れてしまったけど、アルファなのにベータの子と付き合ってたから、あんまり性別にはこだわらないんだね、みたいな話しだったような気がする。それについて彼は、好きになったら性別は関係ない、と答えた。 『アルファだろうがベータだろうが、男だろうが女だろうが、好きになってしまったらそんなの関係なくなるんだ。だけど、オメガだけはダメ』 まだ性に目覚めて間もない中学生の時、フェロモントラップを仕掛けられたのだそうだ。相手は大学生のお姉さん。 中学生とはいえ、アルファだった彼はその時にはもう背も高く、見た目もかっこよかったのだと思う。教育実習に来たオメガのその先生は実習最後の日、誰もいない教室に彼を呼び出し、発情誘発剤を飲んで迫ったという。仮にも教育者を目指す人がすることではない。結局フェロモンが漏れて周囲に知られ、彼はそこから救出されたのだけど、その時の発情したオメガの生々しい姿と、アルファの身体をも支配する強烈なフェロモンにすっかり恐怖し、トラウマになったのだという。 その話を聞いた時、僕の血の気は引いた。だって僕はオメガだから。 でも彼は、青くなった僕を見て慌てて言葉を足した。 『でも友達なら全然大丈夫だよ。だから気にしないで』 その時は笑顔で『良かった』と答えたけど、内心は酷く動揺していた。 それって、もう僕は告白する前からダメだってことじゃん。 その時から僕は、彼への思いを隠すことになった。 思いだけじゃない。オメガのフェロモンも漏れないように気をつけた。 彼いわく、普段のフェロモンは問題ないらしい。だけど発情期のあの欲情を含んだねっとりと重いフェロモンがダメらしいのだ。それは発情期前に漏れ出した少しのフェロモンでもダメなのだと聞いて、僕はいつも発情周期を入念にチェックし、その一週間前から抑制剤を飲み、他のアルファにフェロモンチェックをしてもらってから彼の前に出るようにしていた。 僕は少しの発情したフェロモンも彼に嗅がせないように、そしてなるべくオメガを意識されないように、かなり気をつけて彼と接した。 そしてその努力のおかげで、僕は彼の一番の友達の地位につくことが出来た。 でもその間も、僕の世界は相変わらず輝いたままだった。 彼を好きなまま、だけどそれを知られないように僕はずっと彼のそばにいた。 当然彼を好きな僕の世界は他の人では輝かず、彼を忘れて他の人を好きになることは無かった。 今までみたいに一度寝ちゃえばきっと輝きは消え、他の人に目が向くのだろう・・・。 そう思っても、オメガであることを一切匂わせなかった僕達の間でそういう雰囲気にはならず、またオメガのフェロモンに嫌悪している彼の前でベッドを誘う事も出来なかった。 僕はあんまりにも近くに行き過ぎて、その関係を壊すのが怖かった。
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