1話 幽世帝都の探偵さん

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「いいのかい? お客様なのに、悪いんだけど」 「お茶汲みなら慣れてます。この急須使っていいですか?」 「もちろん!」 「お茶っぱは……少し残ってますね」  床に落ちている茶筒を拾い上げると、何杯か分のお茶っ葉は残っているようだった。煎茶の香りが鼻をくすぐる。  やかんで湯を沸かそうとして、あやめは手を止めた。  コンロがある。あやめのアパートにあるコンロとほとんど同じ見た目だ。  けれど、五徳はあるのにガス火をつけるためのつまみが見当たらなかった。 「ごめんよ。その間に僕はこっちの掃除をするから……えぇっと、箒はどこだったかな」 「あの、龍彦さん」 「なんだい?」 「火はどうやって着ければ……?」 「そうか、すまない。そういえば、ウツシヨとは違うところだったね……そこの棚に紅色の符があるだろ」 「符って、この切符みたいなやつですか?」  棚には小さな箱があった。マッチ箱ほどの大きさの木箱を開けると、見慣れない文字の書かれた切符のような紙切れが入っていた。 「ああ、そうだよ。貸してみて……そらっ!」 「わっ」  龍彦が「ふぅっ」と符に息を吹きかけ、コンロの上に落とした。
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