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符が一瞬、小さな蝶の姿になってから、ぼぅっと燃え上がって見慣れた青い火になった。
「この符は、カグツチ様のご利益だね」
「カグツチ様……ご利益……」
「家庭用の火の神様の符、ってところかな」
龍彦はそう言って、ふんわりと笑った。
訳のわからないことだらけだが、どうやらこの人は信用できそうだ。
あやめは手早く煎茶を淹れ、丸盆で二人分のお茶を運ぶ。
どうにか床掃除を終えた龍彦が、「とっておきだよ」とカステラを出してきてくれた。
「まぁ、ようするに異世界に迷い込んだとでも思ってくれればいいよ」
真っ黄色のカステラを切り分けながら、龍彦が説明をしてくれる。
ここはカクリヨ──幽世──といって、霊的な存在があたりまえに存在する世界らしい。ここの住人はあやめの世界であるウツシヨ──現世──からは認知できない。ときどき混線がおきることがあって、その場合は幽霊のように見えるらしい。
「ウツシヨとカクリヨは、すぐ隣にあるけれどお互いに行き来はできないんだ。普通はね」
「普通は、ですか」
「うん。たまにそういう事故が起きるけど、そっちでは神隠しって呼ばれているらしいね……はい、カステラどうぞ」
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