ノムさん。

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 真っ白な大きな家だった。三階建てで地下室もある。私の友人 ノムさんの家はお金持ち。ノムさんはいつもニコニコしている。 いいヤツなんだけど、ちょっとのんびり屋さん。ノムさんはいつ も先生に怒られていた。  休みの日はノムさんとよく出かけた。中学の時、名古屋で開催 されたマラソン大会やサーカスをいっしょに見に行った。デパー トの高級天ぷら屋さんにいき「アイスクリームの天ぷら」一個だ けを注文し二人で食べた。   ある日曜日のことだった。何もすることがない。するとノムさ んから電話があった。 「卓球しようよ」 と誘われた。実は、ノムさんの家の地下室には卓球台があった。 私は卓球よりも地下室にすごく興味があった。秘密基地みたいで カッコいい。それでもノムさんは楽しそうに卓球をしていた。ノ ムさんは卓球が大好きだった。  中学を卒業し、ノムさんと同じ高校に進学した。部活をどうし ようか迷っていると ノムさんから 「卓球しようよ」 と誘われた。少し悩んだがいっしょに卓球部に入った。私は高校 の部活には、かなりハードなイメージをもっていた。「目指せイ ンターハイ」みたいな本格的な部活だったらどうしようかと心配 していた。  ところが部室に行ったら先輩は二人だけ。それもほとんど練習 に来なかった。その先輩からは「受験勉強が忙しいから、あとは よろしく」といわれた。かなりゆるい部活だった。ノムさんが懸 命に卓球の練習をしている。その横で私はピンポン球を使った野 球に夢中で、投手として新しい変化球を3種類も編み出した。そ んな調子だったので卓球部もあんまり強くなかった。 あっという間に高校三年生になった。私もノムさんも受験勉強に 集中するようになり、お互い卓球をする時間はほとんどなくなっ た。結局、私は東京の大学に行くことになった。一方、ノムさん は浪人した。卒業式の後、卓球をしながらノムさんと少しだけ話 をした。 「じゃあ、元気でな」 ちょっぴりノムさんは淋しそうだった。  私は東京の大学を卒業し、名古屋の会社に就職。ノムさんは一 浪後、九州の大学に入学。そしてなぜか東京の会社に就職した。 すれ違いとなった。  あるとき、私が東京に出張に行った。夕方に時間ができたの でノムさんに連絡をとってみた。帰りの新幹線に乗る前に東京駅 で会うことができた。二人でハンバーガーを食べながら久々に語 りあった。別れ際に 「また卓球しようよ」 とノムさんがニッコリ笑った。  私は 「そうだね」 といって別れた。 やっぱりノムさんらしいなと帰りの新幹線の中で私はほほ笑んで いた。  それからはお互い忙しく、なかなか会えない状態が続いた。少 し前にフェイスブックをはじめたので同級生の名前をあれこれと 調べてみた。何人かそれらしい人物が見つかりメールを送ってみた。 みんな元気そうだった。しばらく調べているとノムさんの名前がみつ かった。メールで連絡すると、すぐにノムさんから返信があった。 「また、卓球しようよ」 というメールとともに卓球のユニフォーム姿のノムさんの写真があっ た。 今度は、どうやって返事をしようかな。                        終わり
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