大阪夏の陣

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 信繁は畦道に座りこんだまま空を仰いだ。  青い。  空はすでに泰平だった。  ーー家康の行いに非を唱えておったが、実のところわしこそが悪人だった。皆、すまんかった。  懺悔の言葉は誰にも届かない。  信繁はこのまま名もない雑兵に討たれたいと思った。自分の首には価値がある。自分を討ったものがそのおかげで潤うのなら、それでいいと思った。  目を瞑る。  瞬く間に気が遠くなっていった。
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