献身のジム

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 気になるのは、そこだけではない。私は自分が朝送ったLINEを見直して眉を顰める。気づいていなかったが、既読マークがついていない。彼はデートの日だというのに、彼女からのラインさえチェックしていないということになる。否。 ――!?既読マーク、昨日のメッセージからついてない……!  やはり、何かがおかしい。私は彼がやっているインスタ、フェイスブック、Twitterの方も確認しにかかる。インスタとフェイスブックは、四月の頭で止まっていた。今日から新しい会社で頑張ります!と会社の前でポーズを撮っている写真がフェイスブックに上がっていて、それが最後になっている。  Twitterの方は四月の終わりくらいまでは写真と呟きがアップされていた。彼は一人暮らしで、アップするのは大抵実家の犬の写真か、自分の晩御飯の写真である。彼は料理が上手いので、大学時代は何度も家に招かれて手料理をご馳走になっていたのたが。  やはりおかしい。上がってくる写真が、カップラーメンとインスタント、冷凍食品ばかり。それも夕食と言いながらアップされるのが早朝だったりするため、フォロワーにも心配されているではないか。しかも、殆どリプライを返せていない。以前はとても交流を大事にしていたというのに。 ――そう、だ。二日酔いで家で寝てたなら……何で、あんな音?  ぞわぞわと背筋が冷たくなるのを感じる。そうだ、私は何度も彼のアパートに行っている。築十五年のボロアパート、家賃は安いが駅から少し歩く場所にある。コンビニと国道は近いからマシだよ、と春来は笑っていたが――要するに。  電車の音などするはずもないのだ。彼が、自宅から電話をかけてきていたのならば。 ――喧騒の音はしなかった。多分屋外じゃない。……だとすると、あのバカが電話してきてたのは。  今日は日曜日。だからこそ、自分も会社がなく、デートの予定を入れられた。春来もそう考えていたはずだというのに。 「ああ、もうっ!」  私は怒りも顕に立ち上がっていた。近くのベンチに座っていたカップルがびっくりした顔でこちらを見ていたが無視である。 ――あんの馬鹿!ほんっと馬鹿!!  私は再び、春来のフェイスブックを開いた。彼の最後の写真と呟きを確認する。  株式会社アルワントクローズ。そのビルの後ろには、フェンス越しに線路がはっきりと映り込んでいた。
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