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死神との旅立ち
「うわああああ!」
「おお、まさかそんなに驚かれるとは」
「いやいや、あんなの見せられたらただでさえ死期の近いわしの寿命が更に縮まるじゃろう!」
「ご安心を、古橋様の寿命に変化はございません」
そう言えば、今自分で言って気付いたがいつの間にかわしはこのアンジとかいう死神の言葉を受け入れとった。
もちろんこんな不可思議な現象が立て続けに起きているのを見たら信じざるをえんというのもあるが、話しているうちにわしを騙すつもりはなさそうじゃと思った。
どうせ、死期が近いなら、この死神の話にのるのはいいじゃろ、万一騙されたら笑いながら死んでやるわい。
「アンジとやら、お前さんのその話乗らせてもらうぞ」
「ありがとうございます、それでは早速、未練をお聞かせいただけますか?」
とりあえず、わしが思う未練を話してみよう。
「とりあえず、わしの今の心残りはまず、死んだ婆さんに感謝の気持ちを伝えられなかったことじゃな、お前さん死神ならどうにかならんか?」
「申し訳ございません、死神でもお亡くなりになった方と生きている方を会わせるのは無理でございます。こちらの世界と死後の世界の法則が崩れてしまいますので」
「そうか、じゃあせめてわしの死後に婆さんの所に連れて行ってくれ」
「重ね重ね申し訳ございません、私ではその決定権はなく、ご夫婦だったとはいえ、古橋様が奥様の所に行ける保証はできかねます」
未練解消をすると言っておいて、いきなり無理と言われるとは想像しておらんかったが、おそらくこれはわしに対する罰なのかもしれん。少しダメもとだがこっちを聞いてみるか。
「それなら、わしの3人の子供達との仲を取り持ってはくれんか、婆さんに感謝の気持ちが伝えられんなら、せめてあいつらと死ぬまでに仲直りをしておきたい」
「ふーーむ、人の心は難しいですからね、古橋様がお亡くなりになるまでに御三方様と和解となると困難を極めます」
「それでもさせてもらえんか?」
「ですが、古橋様、未練の解消がなさなければ、あなたは地縛霊となって現世にとどまり、場合によっては心霊現象を起こし、お子さん達の不幸につながるかもしれません」
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